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2012年11月18日

上場物語10

今日は久々に上場物語の続きです。

一般的な中小企業は税理士が税務決算を行って申告書の提出&納税をすれば終了ですよね。

上場準備会社の場合は監査法人の監査を受けた後に商法(現在は会社法)計算書類を作成します。

この書類は法律上はすべての会社が作成する必要があるのですが、事実上作成しているのは会社法上の大会社、上場会社、その関連会社、上場準備会社ぐらいだと思います。

どのような書類かイメージがわかない方も多いかと思いますのでご説明すると、上場企業の株式を保有していると決算後しばらくすると事業報告という書類が送られてきますよね。

簡単に言うとあの書類(それ以外にもありますがここでは割愛します)を作成します。

雛形があるので上場会社の事例を参考にして作成したのですが、今後10年以上にわたって作り続けることになるとはこの時点では考えていませんでした。

このような決算手続きが一巡すると次はベンチャーキャピタル等からのファイナンスが待っていました。

以下、続く...。
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 14:36Comments(0)上場物語

2012年09月11日

上場物語9

今日は上場物語の続きです。

以前書きましたが、税理士の方に丸投げしていた経理処理を自社で行うようになっていたため決算は自社で行うことになったのですが、監査法人の監査を受ける場合、決算に際して監査法人が銀行等の預金残高や融資残高だけでなく売掛金や買掛金、場合によっては事務所の敷金といったものまで残高確認を行います。

具体的には監査対象の会社が把握しているこれらの勘定科目の残高と照合先の把握している残高が合致しているかを確認することにより計上されている金額の妥当性を担保しようとするもので、もし合致していない場合にはその理由を監査法人に説明する必要があります。

2社分の通常の決算手続き(納税額の確定作業含む)に加えて残高確認状の発送作業や合併手続きも加わったためこの時の決算はかなりタイトなものになりました。(日常業務も当然同時並行的に行っています。)

何だかんだで数字を固め、決算監査を終えると次に待っていたのは商法(現在は会社法)計算書類の作成でした。

以下続く...。
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 22:27Comments(0)上場物語

2012年08月28日

上場物語8

今日は上場物語の続きです。

上場する場合、通常子会社があると連結決算を組まなければならないのですが、単独決算の場合に比べて開示項目が増加するため決算の手間や監査報酬等の諸費用が増加します。

当時ジェイエムネットはソフト開発を行う子会社としてジェイエムソフトという会社を持っていましたが、ある会社と合弁で始めた会社だったため、まずは合弁先の株式を買い取るところから始めました。

合弁先の持つ株式を買い取ることにより100%会社になったため会計士の方と相談の上で連結決算を組まなくて良いように合併期日を第6期の期末日である2月末日に定め、合併契約書の作成、官報への公告、債権者の方への通知、議事録の作成等々の事務処理を行っていきました。

いわゆる簡易合併でしたので合併手続き自体はさほどでもなかったのですが2社の決算を組まなければならなかったことからあっという間に時間が過ぎて行ってしまいました。

以下続く...。
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 22:16Comments(0)上場物語

2012年08月08日

上場物語7

上場物語の続きです。

事業計画を策定するといっても当時のジェイエムネット(現ジェイエムテクノロジー株式会社)には参考になるようなものは何もありません。

とはいえ事業計画を策定しないことには何も始まらないので、まず最初にビジネスモデルを数字に落とし込むことから始めました。

具体的には売上金額を「時間×単価」に分解するとともに売上原価も構成要素単位に分解して理論値を算定できるようにします。

次に実績値と比較することにより理論値の精度を向上させ、これに人員計画を加えて事業計画の骨組みを作成します。

あとは固定費と変動費に分解した諸経費を追加することによって事業計画の概略が出来上がりました。

もちろん事業計画ですからこうした数値計画を作成する前に「将来あるべき姿」に向かうために不足しているリソースは何かを客観的に把握するため自社の強み、弱み、機会、脅威などを分析(SWOT分析)し、そこから今後の事業戦略を策定します。

ちなみにこの時作成した事業計画のフォーマットは若干改良されていますが今でも使用されているほど精度の高いものです。

こうして作成した事業計画を資本政策に落とし込んで上場時の時価総額(想定株価)を予想し、これらの資料をベンチャーキャピタルに検討していただきました。

ベンチャーキャピタルだけでなくこうした場合に必要とされる資料はだいたい同じで、定款、登記簿謄本、株主名簿、組織図、経営陣の経歴書、監査法人によるショートレビュー、事業計画書、直近3年分の税務申告書等一式(会社法の計算書類があればそれも)、資本政策、借入明細、主要取引先(上位10社程度)リストといったところです。

実際にベンチャーキャピタルから出資を受けたのは資本政策の都合上、第6期決算がおわり第7期に入ってからでしたが、このような準備を着々と行っていました。

以下続く...。
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 13:54Comments(0)上場物語

2012年07月26日

上場物語6

今日は上場物語の続きです。

上場を目指す際に必ず作成しなければならないものの一つに資本政策というものがあります。

資本政策とは株式上場に向けて①資金調達②株主利益の適正な実現③株主構成の適正化を図るための新株式の発行や株式の移動等についての計画のことで、誤解を恐れずにお話すると上場まで(上場時を含む)の間、誰にどのタイミングでどれだけの数の株式をいくらで持ってもらうのかということを示した一覧表のことです。

私が入社した当時のジェイエムネットは社長が100%株式を保有していましたので上場に向けての資本政策を実施していくのには理想的な形でした。

資本政策やこの後の上場準備作業を行っていくうえで非常に大事な方との出会いがこの時期にあります。公認会計士のT氏です。

T氏は当時の朝日監査法人(現あずさ監査法人)を退職し独立開業されたばかりで上場準備作業に関して色々と具体的にご教示いただきました。(しかし実際の上場申請期になるとT氏は多忙だったため私がほぼ一人で上場準備作業をすることになります。)

さて、話を資本政策に戻しますが、当時は今と違い額面株式、無額面株式の制度があった時代で一般的な事業会社はほぼ100%額面株式制度を採用していました。(ジェイエムネットも額面株式制度を採用していました。)

まずはじめに上場までの資本政策を作成しそれに基づいて具体的な資本政策を実行していったのですが、当時の手順としては定款変更によりまずすべての株式を無額面株式に転換し、その上で株価1円による株主割当増資により社長の持株数を増やします。

次に役員にインセンティブを付与するため簿価純資産をもとに計算した株価による第三者割当増資を行いました。

次に決算を挟んでから(同一決算内だと株価を変えて第三者割当増資をすることの合理的な説明が面倒なためです)事業計画を策定し、それに基づきベンチャーキャピタル等から資金を集めました。

ちなみに一般の中小企業の場合には事業計画を作成しているケースは銀行などの金融機関に提出しなければならない場合を除くとほとんどないのではないかと思います。

そもそも自社で会計処理すらできていなかった会社が原価計算を行い、事業計画を策定することは当時のジェイエムネットにとっては非常にハードルの高い作業でした。(以下続く...。)
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 18:11Comments(0)上場物語

2012年07月18日

上場物語5

昨日の続きです。

ジェイエムネット(現ジェイエムテクノロジー)に入社した時の肩書は課長だったのですが、経理業務や上場準備を行う人は社内にはいなかったため、実質的な管理部門の責任者として監査法人や金融機関と折衝を行うことになりました。

監査法人の監査を受ける前に予備調査報告書(ショートレビュー)を読み、当社に関する指摘事項を一通り頭に入れてから監査法人の質問等に答えていきました。

ちなみに税務調査の経験はこの時大変役にたちました。冷や汗は流すものですねface11

さて、監査法人との打ち合わせで議題にのぼったのはやはり原価計算制度のことです。

ソフトウェアの開発業務があったことから個別原価計算を行うことになったのですが、具体的にはプロジェクトごとに工数を集計し、集計した工数をもとに人件費などの直接費を集計するとともに各プロジェクトに間接費を配賦していかなければなりません。

そのためには昨日も書きましたが勤怠表の記載方法を変更する必要があったため、こちらで工数表の案を作成し、現場の方に協力を仰ぎ、平成13年から導入しました。

ただ、きちんと現場の方に工数表の記入方法が浸透したのはかなり時間が経ってからでしたけれど...。

新しい工数表を導入するまでの間は社内の勤怠表を利用し、個別にどの業務に何時間費やしたのかヒアリングすることにより対応しました。

また、同時に社内には就業規則や給与関連の規定しか存在していなかったため決裁権限規程を作成し、運用を始めたのですが、拠点が全国に点在していたこともあり社員が社長にメールや口頭で直接承諾をとるという決裁方式を採用していたため、その運用にはかなり苦労しました。

私は銀行にいたため稟議書を起案するのは当たり前だという環境下で育っていたのですが、現場の方々はそのような経験がない方が多く、また経営者自身もそのようなことに不慣れだったため最初の頃は稟議書制度が全く機能しませんでした。(以下続く...。)
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 11:20Comments(0)上場物語

2012年07月17日

上場物語4

今日は上場物語の続きです。

内製化を始める前は月次決算ができるのは毎月20日以降だったのですが、自社で入力を開始しても最初の頃はなかなかその時間を短縮することができませんでした。

その原因は給与計算の確定に時間がかかっていたこともあるのですが、拠点が複数に渡っていたこともその要因の一つです。

当時ジェイエムネット(現ジェイエムテクノロジー)の本社は大阪にあったのですが、拠点として最大だったのは今の本社のある福岡であり、しかもソフトウェア部門が別会社(ジェイエムソフトといいました)だったため余計に効率が悪かったのです。

また、原価計算を行う必要もあったのですが、当時のジェイエムネット(ジェイエムソフト)の勤怠管理は個別案件ごとの工数管理を行っていませんでしたので、事務所勤務の方の勤怠表の記入方法から変更してもらう必要があり、原価計算が何とか形になったのは第6期(平成13年2月期)の決算を行う頃でした。

その話はまた別の機会に書きたいと思います。

このように社内の経理業務の内製化作業を行う傍ら、朝日監査法人(現あずさ監査法人)による監査の対応責任者としてデビューすることになります。(続く...。)
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 11:55Comments(0)上場物語

2012年07月15日

上場物語3

今日は上場物語の続きです。

経理業務を委託していた税理士の方と同じ会計ソフト(PCAでした)を使用することも考えたのですが、今後の拡張性などを考慮した結果、勘定奉行を導入することにしました。

ちなみに勘定奉行は今でも使用していますし、他社の事例ですが年商100億円を超える会社でも使用していることを鑑みると当時の選択は正しいものだったのだと思います。

とはいえいきなり月次決算を行えるような社内体制でもなかったため、最初の2~3カ月程度は社内で月次決算を行うのと同時に今まで通り税理士の方にも月次決算を行っていただき、その結果を突合して差異がないか確認する方法をとりました。

上場を目指される会社の方で税理士に丸投げしているような会社の場合は、このように移行期間を設けて業務を内製化していく方が無難だと思います。

また、同時に給与計算の内製化もはじめました。給与計算を内製化した理由は一般の中小企業のような一部現金主義会計的な経理処理では上場会社の処理としてはNGだからです。

例えば給与計算の締めが15日締め25日払いのような場合に一般の中小企業で多い処理は25日に支払った給与をその月の給与として処理する方法ですが、上場を目指すと16日~末日までの給与を計算し、未払費用として計上していくことが要求されます。

上場を目指すと月次決算を締めるスピードも早期化が要求されます(実績数値を早期に把握するとともに予算と実績の差異を分析し、取締役会などでその差異について報告・議論する必要があるためです。)ので、月次決算の早期化を図るうえでも給与計算の内製化は必須でしたが、給与計算以外にも月次決算の早期化のためには様々な関門が待ち受けていました。(続く...。)
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 22:35Comments(0)上場物語

2012年07月12日

上場物語2

昨日の続きです。

ジェイエムネット(以下JMN)に入社してみると営業事務を行っているのが2名、経理1名、総務・給与計算1名の陣容でしたが、営業事務以外の2名は最近入社したばかりの方で実質的には営業事務を行っている方しかいないような状況でした。

会計や給与計算は顧問税理士に丸投げ状態でしたので、まずはその内製化からかなと思っているといきなり今週税務調査があるという説明を受けたので、上場準備の話はさておき、まずは税務調査の対応に専念することになりました。

とはいえ入社したばかりで会社の実質的な資金の流れや帳票類について何も理解していなかったため、営業事務の方に説明を受け、顧問税理士の方とともに税務調査の対応を行ったのですが、調査対応を行ったことでJMNのビジネスへの理解が深まったことは思わぬ副産物で後々役に立つことになります。

それはさておき、そのような状況下での調査対応でしたので、正直冷や汗だらけの綱渡り状態だったのですが、何とか3日間税務調査対応を終えることができました。

その結果、追徴課税ゼロという結果に終わったことは正直予想外のことでしたね。

さて、その後、税務調査がひと段落したので、まずは経理の内製化を図るべく会計ソフトの選定からスタートすることにしました。(以下、続く...。)
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 14:47Comments(0)上場物語

2012年07月11日

上場物語1

今日から上場を通じて経験したことを自分自身の記録に残す意味もあり、少しずつ書いていきたいと思います。

私が当時のジェイエムネット(今のジェイエムテクノロジー)に入社したのは2000年9月のことですが、8月の中旬からお手伝いをさせていただいておりました。

ジェイエムネット(以下JMN)に入社するきっかけはある人材紹介会社の紹介によるもので、JMNと何らかの縁故があったわけではありません。

当時私は会計事務所に勤務しており、企業内で活動したいという希望を叶えるために転職活動をはじめたところだったのですが、最初に内定をいただいた某東証1部上場企業は上層部が銀行出身者であまり魅力的には思えずにいたため別の紹介会社に登録して最初に紹介いただいたのがJMNでした。

私が勤務していた会計事務所が京都の北山にあったため、JMNの植木社長と京都四条の歌舞伎座前で待ち合わせをし、鴨川沿いのお店でお話を伺いました。

その席で会社を上場させるという話があることを強く認識した私は、知的好奇心ややったことのないことをやるという冒険心、企業内で銀行での経験や会計事務所での経験を活用できるチャンスだと思い、JMNへの入社を決意しました。

税理士事務所を円満に退職し、会社を上場させるという未知の世界を想像しつつJMNに入社してみると、そこにあったのは単なる普通の中小企業の姿でした...。(以下続く)
  


Posted by 税理士細川誠哉 at 17:01Comments(0)上場物語